9Apr

Yuri Samoilov
前回は、腸内フローラとは?『腸内環境を整えることで健康になる』についてお話させていただきました。
腸内環境がいかに健康面に作用しているかがお分かりいただけたかと思います。
今日は、『砂糖』をテーマにお話したいと思います。
以前、”糖”について書いた記事がありますので、合わせてそちらもお読みください➡糖は体に悪いのか?
今回は、度々話題に挙がる”砂糖”について再度お話させていただきたいと思います。
『糖質はたんぱく質や脂質に並ぶ三大栄養素』であるのは有名な話ですが、この”糖質が体に必要な栄養素”であるという先入観が、結果的に多くの人の健康を奪っていることは疑う余地がありません。
今回は、
糖質の摂り過ぎは病気の元・体に悪い?『空腹は最も良い治療法』
をテーマにお話させていただきたいと思います。
☑糖分は脳のエネルギーってホント?
皆さんは『糖分は脳のエネルギー』というキャッチフレーズを一度は耳にしたことがあるでしょうか?
また、それを信じて甘いものを積極的に食べる人も少なくないでしょう。
確かに、血液中のブドウ糖が脳や体のエネルギー源であることは間違いありません。
体の器官の中で多くのエネルギーを消費をするのが脳です。
もちろん、ブドウ糖が枯渇すれば脳は働くことができなくなりますが、実は大きな誤解があります。
食事をすると、そこで摂取した糖質は肝臓と筋肉にグリコーゲンとして貯蔵されますが、貯蔵容量にはキャパシティがあるため、貯蔵しきれなかったブドウ糖は血液中に溢れてきます。
そのため、食後に血糖値が上がるのですが、病気や生活習慣の悪化で肝臓の機能が低下している人が同じ食事をしても血糖値の上昇が大きくなるのは、肝臓に十分なグリコーゲンを貯蔵できず、血液中に溢れてくるブドウ糖の量が増えるためなのです。
血糖値は、食後30分~60分でピークに達し、その後は分泌されたインスリンの働きによって下がってきますが、脳や体のエネルギーが不足することにより、肝臓は貯蔵したグリコーゲンを分解して、ブドウ糖を血液中に放出します。
このメカニズムが働いているおかげで糖値が下がり過ぎて、エネルギー不足になることを未然に防げているのです。
しかし、肝臓のグリコーゲンの貯蔵量は多くないため、いつまでも血糖値を保っていられなくなると、第2のメカニズムが働きます。
これを『糖新生』と呼びます。
これも肝臓で行われるのですが、筋肉にあるアミノ酸を肝臓で分解し、ブドウ糖を作り血液中に供給し、血糖値を保ちます。
つまり、グリコーゲンからの糖の供給と、糖新生による糖の供給という2つの働きがあるため、糖をしばらく摂っていなくても脳や体のエネルギーが不足することは理論的にありえないのです。
また、一時期話題になった『ケトン体』も脳は利用することができるため、栄養不足で脳の働が衰えることがありません。
一方、筋肉に蓄えられたグリコーゲンは、筋肉が活動するためのエネルギー源として利用されるため、直接血液中に供給することはありませんが、骨格筋をはじめとする筋肉に利用されるため、筋肉、肝臓とそれぞれで蓄えたグリコーゲンは分業して、それぞれ必要な臓器や器官に供給されるようなシステムになっているのです。
以上のようなことから、血糖値を安定させるこのシステムが正しく機能している限り血糖値が下がり過ぎる、いわゆる”低血糖”になることはないので、
糖分は脳のエネルギーだから積極的に甘いものや炭水化物を摂らないといけない、ということは生理学上否定せざるを得ません。
☑糖質の摂取がもたらす”糖化”とは?
糖質を摂取すると”糖化”という現象が体の中で起こることをご存じでしょうか?
実は、糖質を摂取すうるもっとも深刻な問題としてこの”糖化”が挙げられます。
糖は、人間の体の中で血液や体液に存在していますが、”タンパク質や脂質などの物質と結合する”という性質を持っています。
通常は、結合する際に酵素やホルモンを介在するのですが、この”糖化”はそれらの介在無しに起こり、また血液中の糖の濃度が上がれば上がるほど起こりやすくなります。
では、糖化がなぜ問題視されるのか?
それは、タンパク質や脂質などの物質が糖化することにより、その物質を持っていた性質や機能を失わせてしまいます。
例えば、糖尿病に関して指標の一つとされるヘモグロビンA1cは、ヘモグロビンが糖と結合することにより、ヘモグロビンが本来持っていた酸素を運搬するという性質が無くなった状態を指します。
つまり、糖尿病になりヘモグロビンA1c値が高値になると、酸素を運搬することができない変性したヘモグロビンがたくさんあるために、貧血のように細胞に酸素が足りない状態、になってしまいます。
また、血液中のアルブミンというタンパク質は薬をはじめとする多くの物質や成分の輸送や貯蔵を行っていますが、このアルブミンが糖化してしまうと、薬の効き目が悪くなってしまうということが起こります。
このように、糖質がもたらす糖化という現象は、人体にとって深刻な問題を引き起こす可能性があることが分かります。
☑糖質を取ることでアレルギーがひどくなる?
『栄養療法』で有名な溝口徹先生によると、糖質の摂取でアレルギー症状が悪化、慢性化してしまうようです。
実は、アトピー性皮膚炎や花粉症、ぜんそくなどのアレルギー症状で悩んでいる方の共通点として『甘いものや炭水化物が好物』だったのです。
では、なぜ甘いものや炭水化物を摂取するとアレルギー症状が悪化するのでしょうか?
それには、血糖値の上下動が関係しています。
甘いものや炭水化物を摂取すると、血糖値が急上昇してしまいます。
血糖値が急上昇すると、それを下げるためにすい臓からインスリンが多量に分泌されます。
インスリンが作用すると血糖値は下がるのですが、次は下がった血糖値を上昇させるために副腎からコルチゾールやアドレナリンなどのホルモンが分泌されます。
このように、普段から糖質過多の状態が続いている人は、その代償として血糖値の上下動に関与するインスリン、コルチゾールやアドレナリンなどのホルモンを出すためにすい臓や副腎を酷使していて、その結果様々な病気や症状を引き起こしてしまいます。
例えば、
インスリンを分泌するすい臓を酷使していると、インスリンの量が減ってしまったり、正常なタイミングでインスリンが分泌されなくなるなど、糖尿病へつながってしまいます。
また、アドレナリンは交感神経を刺激するホルモンなので、普段から多量に分泌されることで、気分が高揚したり、イライラしてしまいます。
逆に分泌されなくなると、気分が沈み込んでしまったり、うつ状態になったりしてしまいます。
最も深刻な問題はコルチゾールに関してです。
というのも、コルチゾールはいわば体に備わった天然のステロイドなので、アレルゲンやストレスに対抗するという役割がありますが、糖質過多の食生活を送っていると副腎が疲弊し、必要なときに必要な量だけコルチゾールが分泌されなくなり、アレルギー症状が悪化したり、ストレスに負けてしまうという問題があります。
このように、普段何気なく口にしている”糖質”が知らず知らずのうちに体を蝕んでいるということ、糖質は病気の元と言っても過言ではないことをご理解いただけたと思います。
私は、これに気付いてからは糖質を食べる機会を出来るだけ減らしており、また毎日空腹の時間をあえて作るような生活に変えました。
すると、以前より風邪や病気にかからなくなり、イライラすることも減り、体が元気になりました。
私のダイエット理念は、『美と健康を両立する』ことなので、健康になることは痩せることと同様、とても重要で不可欠な要素だと考えています。
☑空腹状態は最も体に良い状態?
人間の体は、胃の中が空になり、また血液中の糖分の量が不足するとお腹が空いた”空腹”の状態になります。
空腹状態では、体は外部からのエネルギー源の摂取を求めているので『お腹が空いたからご飯を食べたい』という衝動にかられます。
普段、糖質を含む食材を中心に食べている人は、空腹になると甘いものや炭水化物を食べたくなるはずです。
またダイエット中の人は、空腹状態は最も厄介な敵だと感じているでしょう。
しかし、最近の研究で”空腹”はとても体に良い影響をもたらすことが報告されています。
免疫力の中心である血液中の白血球は、満腹のときは糖質をはじめタンパク質や脂質などの栄養素がたくさんあるので、それらを食べるため外部からウィルスや菌、アレルゲン物質が体内に侵入してきたとしてもそれらを十分に貪食することができません。
つまり、満腹状態=免疫力が低い状態、だと言えるのです。
実は、この状態を裏付ける実験や報告、事実がいくつかあります。
アメリカ、ニューヨークのマウントサイナイ医大のグロス教授が、ある量の放射線を『満腹ネズミ』に照射したところ、100%の発ガンがあったのに対して、『腹5分の空腹ネズミ』に同量の放射線を照射しても、発ガン率は、わずか0.7%だったそうです。
また、エモリー大学病院のS・ハイムスフィールド博士が平均年齢50歳で同じ重症度の進行ガン患者100人を無造作に抽出して、A群の50人には病院の普通食を食べてもらい、B群には特別に種々の栄養素を存分に入れたスープを食べてもらい続けたところ、A群の平均生存日数は300日だったのに対し、B群は75日だったそうです。
こうしたことから、私達は何か病気になったり体が弱ったりすると、すぐに『薬か栄養を摂らないといけない』という足し算のような思考に陥りがちですが、本当に必要なことは『いかに必要の無い物を摂らない生活に変えていくか』という引き算なのです。
特に、ガンのような悪性新生物は食べすぎるという飽食の時代がもたらした生活習慣病と言えるのではないでしょうか?

桑原 和也

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